概要
微小電圧(μVオーダー)を扱う精密電気測定では、異種金属接合部に生じる熱起電力(サーモ起電力)が測定誤差の主要因となります。株式会社フォスターでは、コネクタの接触抵抗をμΩ〜mΩオーダーで測定する際に、熱起電力除去技術を適用し、高精度な測定結果を提供しています。
本ページでは、熱起電力が微小電圧測定に及ぼす影響のメカニズムと、オフセットキャンセル法・反転通電法の原理および実践的な適用方法を解説します。
熱起電力が微小電圧測定に与える影響
熱起電力(サーモ起電力)はゼーベック効果により、異なる金属が接触している接合部に温度差が生じると発生します。測定回路には複数の異種金属接合点(測定端子・接続リード・DUTの接続部など)が含まれるため、各接合点の温度差の総和として数μV〜数十μVの誤差電圧が生じます。
例えば、接触抵抗10mΩのコネクタに1mAを通電した場合の電圧降下は10μVです。このとき10μVの熱起電力誤差が存在すると、抵抗値に100%の誤差が生じます。μΩ〜低mΩオーダーの測定では、熱起電力対策なしでは信頼できる測定値が得られません。
オフセットキャンセル法の原理
オフセットキャンセル法は、電流を流さない状態でオフセット電圧(熱起電力成分)を測定し、通電時の測定値からそのオフセット値を差し引く方法です。手順は①通電ゼロの状態でオフセット電圧V_offset を測定、②測定電流Iを通電して電圧V_meas を測定、③ V_R=V_meas-V_offset で真の電圧降下を算出、の3ステップです。
ただし、オフセットキャンセル後でも測定中の温度変動(ドリフト)があると誤差が残ります。測定環境の温度安定化と短時間での測定完了が精度向上の鍵です。
反転通電法(電流反転法)の原理
反転通電法は、正方向電流+I時の電圧V₊と逆方向電流-I時の電圧V₋を測定し、その差の1/2を真の電圧降下とする方法です。V_R=(V₊-V₋)/2 で計算されます。熱起電力は電流方向に依存しないため、正逆の差分を取ることで熱起電力成分がキャンセルされます。
フォスターの接触抵抗測定では、この反転通電法を標準として採用しています。測定装置によっては自動で正逆通電と演算を行い、熱起電力を除去した正確な抵抗値を出力します。測定電流の切替速度と温度安定性が測定精度に影響します。
実測での留意点と適用範囲
いずれの手法も、測定中の温度が一定であることが前提です。電流通電による自己発熱が大きい場合や、測定環境温度が変動する場合には追加対策(低電流化・遮熱対策・測定時間短縮)が必要です。
μΩ以下の超微小抵抗測定では、オフセットキャンセルと反転通電法を組み合わせ、さらに四端子法を適用することで信頼性の高い測定値を得ます。フォスターでは試験依頼の内容に応じて最適な測定手法を選定します。
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よくある質問
反転通電法でなぜ熱起電力が除去できるのですか?
熱起電力は電流の方向に関係なく一定値(符号も一定)として現れます。正方向電流と逆方向電流の測定電圧の差を取ると熱起電力成分は相殺され、純粋な電圧降下成分のみが残るためです。
オフセットキャンセルと反転通電法はどちらが精度が高いですか?
反転通電法の方が温度ドリフトの影響を受けにくいため一般的に精度が高いです。オフセットキャンセルは電流ゼロ時と通電時の2点測定のため、測定間の温度変化が誤差になります。両者を組み合わせることも可能です。
熱起電力の大きさはどの程度ですか?
よく使われる銅とコンスタンタンの組み合わせでは約40μV/℃のゼーベック係数を持ちます。測定回路内の異種金属接合部の温度差が1℃あるだけで数十μVの誤差が発生します。mΩ以下の抵抗測定では無視できない誤差です。
測定環境温度が変動する場合の対策はありますか?
温度変動を抑えるために、測定装置を恒温ボックスに収納する、測定前に十分な温度安定化時間を設ける、測定時間を極力短縮するなどの対策が有効です。フォスターでは精密測定に対応した温度管理環境で試験を実施しています。
微小電圧測定で使用する電流値の選定基準はありますか?
通電電流が大きいほど電圧降下が大きくなりS/N比が改善しますが、自己発熱による接触部温度上昇・熱起電力増大の問題が生じます。一般にコネクタの接触抵抗測定では10mA〜1Aが使用されます。評価目的と許容発熱を考慮して選定します。
株式会社フォスターについて
株式会社フォスターは三重県に拠点を置き、自動車部品(コネクタ・ハーネス・圧着端子)の受託試験を中心に20年以上の実績を有しております。環境試験、電気特性試験、機械的特性試験など幅広い評価に対応し、お客様の品質保証・開発をサポートしています。
