概要
コネクタの接触信頼性は端子ばねが一定の接触力を長期にわたって維持できるかどうかで決まります。ばね限界値(Kb)はばねが弾性変形の範囲内で機能できる最大変位量または応力の指標であり、Kbを超えた変位を与えると塑性変形(へたり)が生じ接触力が永久低下します。株式会社フォスターでは接触抵抗測定と高温放置試験を組み合わせ、接触ばねの長期特性と接触力維持性を評価しています。
端子ばね材料の選定と変位量設計がコネクタの接触力設計の核心です。リン青銅・ベリリウム銅・コルソン合金など銅合金ごとにKb値と導電率は異なるトレードオフを持ち、用途・コスト・環境条件に応じた最適選択が求められます。
ばね限界値(Kb)の定義と意味
ばね限界値Kbは材料の弾性限(降伏点)に関連する設計上の指標で、「ばね断面係数×Kb」が曲げばねに与えてよい最大曲げ応力を表します。一般にKbは材料の0.2%耐力(σ₀.₂)に安全率を乗じた値として設定されます。
接触ばねの設計では実際の変位量から発生応力を計算し、この値がKbを下回るように寸法を設定します。余裕が小さいとわずかな過荷重(過剰挿入・昇温による熱応力)でへたりが生じるため、設計余裕量(Kb余裕)の確保が重要です。
材料別Kb値の比較
コネクタ端子ばねに使用される主要銅合金のKb値・引張強さ・導電率は材料選定の基本データです。ばね特性と導電率は一般にトレードオフ関係にあり、高強度材ほど導電率が低下する傾向があります。
高温環境ではKb(弾性限)が低下し同じ変位量での残留応力が増加するため、高温下でのへたり量は常温より大きくなります。高温放置試験後の接触力低下率を測定することで、使用温度域でのKbの実効的な余裕を確認できます。
| 材料 | 引張強さ(MPa) | 導電率(%IACS) | Kb(相対) | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 黄銅(C2600) | 300〜500 | 27〜28 | 低 | 低コスト・低強度 |
| リン青銅(C5191) | 500〜700 | 15〜20 | 中 | バランス型・汎用 |
| コルソン合金(C7025等) | 600〜800 | 40〜50 | 中〜高 | 高導電・高強度両立 |
| ベリリウム銅(C1720) | 900〜1200 | 20〜22 | 高 | 最高強度・高コスト |
接触ばね変位量設計と余裕量
ばね変位量(たわみ量)は嵌合深さと端子形状から決まります。変位量δから発生応力σを計算し、σ ≤ Kb×(断面係数補正)を満たすように板厚・幅・アーム長さを設計します。余裕量として設計応力をKbの70〜85%以内に抑えることが一般的です。
コネクタの挿入力(F-Sカーブ)から逆算して接触力を推定することも可能です。フォスターでは挿入力プロファイル計測と接触抵抗測定を組み合わせ、設計接触力と実測接触力の対応を確認する評価を実施しています。
高温放置後のへたりと接触力低下の評価
高温環境ではクリープ(常応力下での時間依存変形)が進行し、接触ばねのへたりが室温より加速されます。車載コネクタでは125℃・1000時間などの高温放置試験が標準的に求められます。
フォスターの高温放置試験では試験前後の接触抵抗測定と挿入力測定を行い、へたりによる接触力低下量を定量評価します。材料別・変位量別の試験データをもとに、信頼性設計の根拠となるデータを提供しています。
関連する試験
関連するページ
- 接触力(コンタクトフォース)と接触抵抗の関係
- コネクタ端子用銅合金の比較|黄銅・リン青銅・ベリリウム銅
- 接触抵抗のメカニズム|集中抵抗と皮膜抵抗の寄与と低減設計
- F-Sカーブの読み方とコネクタ接点力の評価
- コネクタの端子(コンタクト)とは?
よくある質問
Kbを超えた場合、端子は壊れますか?
即座に破断するわけではなく、塑性変形(へたり)が生じて接触力が永久低下します。接触力低下は接触抵抗の増加や接触不安定につながるため、実用上の故障とみなします。破断に至るのはKbを大幅に超えた場合や繰り返し応力による疲労破壊です。
ベリリウム銅はリン青銅よりどの点が優れていますか?
ばね限界値と引張強さが大幅に高く、同じ変位量に対して高い接触力を発生させます。高温での強度低下も少なくへたり量が小さいため、高温・高振動・高接触力が要求される車載・宇宙・軍需用途に採用されます。ただしコストと有害物質規制(RoHS除外品)への対応が必要です。
高温放置試験で接触抵抗が増加する原因はへたりだけですか?
へたりによる接触力低下のほか、接触面の酸化膜成長・めっき層の相互拡散・端子材の軟化なども接触抵抗増加の要因です。フォスターでは試験前後の接触抵抗と挿入力を対比測定し、原因を切り分けています。
設計余裕量はどのくらい確保すべきですか?
一般的に発生応力をKbの70〜85%以内に設計します。余裕が小さいと部品公差・組立誤差・使用温度の変動で容易にKbを超えるリスクがあります。車載用途ではより厳しい余裕設定が求められる場合があります。
フォスターでばね特性の評価を依頼できますか?
接触抵抗測定・挿入力試験・高温放置試験の組み合わせでばね特性の変化を評価できます。試験前後の比較データを提供しますので、設計検証や不具合原因究明にご活用ください。
株式会社フォスターについて
株式会社フォスターは三重県に拠点を置き、自動車部品(コネクタ・ハーネス・圧着端子)の受託試験を中心に20年以上の実績を有しております。環境試験、電気特性試験、機械的特性試験など幅広い評価に対応し、お客様の品質保証・開発をサポートしています。
