熱電能(ゼーベック係数)の金属材料別一覧と選定基準

コネクタ・ワイヤーハーネスが並べられている様子

熱電能(ゼーベック係数)の金属材料別一覧と選定基準とは

熱電能(ゼーベック係数:Seebeck Coefficient)とは、材料に温度差を与えたとき、単位温度差あたりに発生する熱起電力(電圧)の大きさを示す値です。
単位は通常 µV/℃(マイクロボルト毎℃) または µV/K で表されます。
熱電対は、このゼーベック係数の異なる2種類の金属を組み合わせることで温度を測定しています。

株式会社フォスターでは、自動車用コネクタ・ワイヤーハーネス・端子を対象とした信頼性評価試験を実施しています。
本ページは、温度上昇試験や通電試験で熱電対を使用してきた経験をもとに、ゼーベック係数の考え方や代表的な金属材料、熱電対材料の選定基準について解説しています。


ゼーベック係数の考え方

金属に温度差が生じると、電子のエネルギー分布が変化し、電子が高温側から低温側へ移動します。
この電子の移動によって電位差(熱起電力)が発生します。
ゼーベック係数は、
「1℃の温度差で何µVの電圧が発生するか」
を表す物理量です。

例えば

  • 40µV/℃なら
  • 温度差100℃で約4mV

程度の熱起電力が発生します。


代表的な金属材料のゼーベック係数一覧(室温付近の代表値)

金属・材料ゼーベック係数(µV/K)※代表値特徴
銅(Cu)約 +1.5電線で広く使用
アルミニウム(Al)約 +3.5軽量・導電性が高い
銀(Ag)約 +1.6高い導電率
金(Au)約 +1.8耐食性に優れる
ニッケル(Ni)約 −15熱電対材料として使用
鉄(Fe)約 +18J熱電対で使用
クロメル約 +25K熱電対の正極
アルメル約 −18K熱電対の負極
コンスタンタン約 −35T・J熱電対で使用
白金(Pt)約 0〜+6高精度・高温測定向け
タングステン(W)数µV/K程度超高温用途

※数値は室温付近の代表値であり、温度や材料組成によって変化します。


なぜ2種類の金属を使用するのか

熱電対では、ゼーベック係数の異なる2種類の金属を組み合わせます。
もし同じ金属同士を接続した場合は、両者のゼーベック係数がほぼ同じであるため、熱起電力はほとんど発生しません。
一方、ゼーベック係数の差が大きい組み合わせでは、温度変化に対してより大きな熱起電力が得られ、温度測定が容易になります。


熱電対材料の選定基準

熱電対材料を選定する際は、ゼーベック係数だけではなく、以下の点も重要です。

  • 使用温度範囲
  • 発生する熱起電力
  • 長期安定性
  • 酸化しにくさ
  • 耐食性
  • 応答速度
  • 機械的強度
  • コスト

用途に応じて最適な熱電対の種類を選定することが重要です。


代表的な熱電対の組み合わせ

熱電対材料特徴
Kクロメル・アルメル汎用性が高い
T銅・コンスタンタン低温測定に適する
J鉄・コンスタンタン一般工業向け
Nニクロシル・ニシル高温安定性に優れる
R白金ロジウム・白金高温・高精度
S白金ロジウム・白金標準温度計としても使用
圧着端子に熱電対を取り付けた様子

自動車分野で多く使用される熱電対

自動車用コネクタの信頼性評価では、

などでK熱電対が最も一般的に使用されています。
K熱電対は広い温度範囲に対応し、耐久性とコストのバランスに優れているため、多くの評価試験で採用されています。


株式会社フォスターの温度測定・評価サービス

株式会社フォスターでは、熱電対を用いた温度測定を含む各種信頼性評価試験を実施しています。熱電対の選定や取付、試験回路の作製、データロガーによる温度記録まで一貫して対応し、自動車用コネクタやワイヤーハーネスの温度評価をサポートします。

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よくある質問

ゼーベック係数は温度依存するか?

はい。金属では温度とともにゆるやかに変化します(K型で−200〜1200℃で数%変動)。熱電対のJIS換算表・NIST基準テーブルはこの非線形性を補正しています。

高いS値の材料が常に良い熱電材料か?

いいえ。熱電変換効率ZT = S²σ/(λ) で評価され、Sだけでなく電気伝導率σが高く熱伝導率λが低いことが必要です。ウィーデマン・フランツ則からσとλはトレードオフの関係にあります。

コネクタ端子材料のゼーベック係数は問題になるか?

リン青銅・ベリリウム銅のS値は数μV/K程度と小さく、通常のコネクタ設計では問題になりません。ただし精密計測回路ではゼロ点誤差として現れる場合があります。

2つの異なる金属端子を接続した場合に起電力が発生するか?

はい。異種金属接続部には温度差がなくても電位差(接触電位差)があります。温度勾配があればゼーベック熱起電力が追加されます。精密回路では同一材料の端子を使うことが推奨されます。

ゼーベック係数の単位は?

一般に μV/K(マイクロボルト毎ケルビン)で表し、1K(=1℃)の温度差あたりに生じる熱起電力の大きさを示します。

ゼーベック効果とペルチェ効果の違いは?

ゼーベック効果は温度差から電圧が生じる現象、ペルチェ効果は電流を流すと接合部で吸熱・発熱が起こる逆の現象で、両者は表裏の関係にあります。

ゼーベック係数が大きい材料は?

純金属のS値は数〜十数μV/K程度と小さく、ビスマスやアンチモン、Bi₂Te₃などの半導体系熱電材料は大きなS値を示します。熱電対では2種の材料のゼーベック係数差を利用します。

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