概要
自動車のワイヤーハーネスに使われる低圧電線には、JASO規格に基づくAVSS(極薄肉ビニル電線)やISO規格に基づくCIVUS(超極薄肉ビニル電線)など複数の種類があり、被覆材の厚みによって使用可能な部位や軽量化効果が異なります。配索経路によっては金属エッジや他部品との擦れによる被覆摩耗が断線・地絡の原因になるため、規格の違いを理解した上で摩耗・薬品曝露に対する耐性を評価することが重要です。本記事ではAVSS/CIVUSの規格上の位置づけと、実務で行うべき評価項目を解説します。
AVSSとCIVUSの規格上の違い
AVSS(自動車用極薄肉塩化ビニル絶縁低圧銅電線)はJASO D 625で規定される極薄肉ポリ塩化ビニル被覆の低圧電線で、従来のAV線に比べ被覆厚を薄くして軽量化・小径化を実現した規格です(許容電流はJASO D 609に基づきます)。耐熱クラスは80℃(累積通電時間10,000時間を目安とした導体最高許容温度)で、乗用車の一般的な配線に広く使われています。一方CIVUSはISO 6722に準拠した電線で、圧縮導体の採用により導体をさらに細径化し、絶縁体もAVSSよりさらに薄くした超極薄肉タイプです。被覆材はAVSSと同じ塩化ビニル(PVC)で、耐熱クラスはClass A(-40℃〜85℃)に対応しています。AVSSよりもさらなる軽量化・小径化が求められる部位に採用されますが、被覆が薄い分、摩耗や薬品曝露への耐性は用途に応じた確認が必要です。
被覆材に求められる耐摩耗性・耐薬品性
ワイヤーハーネスは車体パネルの穴部、他部品との接触部、クランプ固定部などで被覆表面が繰り返し擦れることによる摩耗リスクがあり、被覆が薄いAVSS系電線では特に注意が必要です。実車では走行振動によって電線が金属エッジと数万〜数十万回オーダーで擦れる可能性があり、被覆材の耐摩耗性が不足すると導体露出による地絡・短絡に直結します。またエンジンルームやアンダーボディに配索される電線は、エンジンオイル、ブレーキフルード、不凍液、洗車用の酸性・アルカリ性洗剤などに曝露されるため、被覆材の耐薬品性(膨潤・軟化・ひび割れの有無)も重要な評価項目です。CIVUSはAVSSよりもさらに被覆が薄い電線であるため、耐摩耗性の観点では特に慎重な評価が必要です。実際の使用条件下での定量評価なしに規格グレードだけで判断するのはリスクがあります。
AVSSとCIVUSの比較
| 項目 | AVSS | CIVUS |
|---|---|---|
| 被覆材 | 薄肉ポリ塩化ビニル | 架橋ポリエチレン |
| 耐熱グレード目安 | 80℃クラス | 100〜125℃クラス |
| 耐摩耗性・耐薬品性 | 標準的 | AVSSより高い傾向 |
| 主な適用部位 | 車室内・一般配索部 | エンジンルーム、高温・油脂曝露部 |
| 配索性 | 柔軟で扱いやすい | やや硬めになる傾向 |
電線選定・評価で確認すべき項目
- 配索経路上での金属エッジ・クランプとの接触有無、擦れ頻度の想定
- 使用環境温度と規格グレード(AVSS/CIVUS/AEXなど)の整合性確認
- 接触が想定される油脂・薬品類の種類と、被覆材の耐薬品性試験による確認
- 被覆表面の擦れによる摩耗量評価(往復摺動によるラビング試験の活用)
- 電線単体の引張強度・伸びの確認(施工時の張力や熱収縮による損傷防止)
- 低温下での被覆硬化・ひび割れリスクの確認
実務での評価アプローチ
電線単体の材料規格適合だけでなく、実際の配索状態を模擬した評価が重要です。例えば車体パネル貫通部を模擬した治具で電線を固定し、振動を与えながら被覆の摩耗進行を観察する、あるいは洗車を想定した薬液を塗布した状態で摺動を加えるといった複合的な評価により、規格試験だけでは見えにくい実使用でのリスクを事前に把握できます。既存車種でのハーネス擦れ不具合の原因調査では、被覆材の耐摩耗性試験と耐薬品性試験を組み合わせ、摩耗と薬品劣化のどちらが支配的要因かを切り分けることが有効です。
関連する試験
よくある質問(FAQ)
AVSSとCIVUSはどちらを選べば良いですか?
AVSSとCIVUSはいずれも塩化ビニル(PVC)被覆の低圧電線ですが、CIVUSはAVSSよりもさらに被覆を薄くした電線です。軽量化・小径化のニーズが特に高い部位ではCIVUSが選定されることがありますが、被覆が薄い分、配索環境(摩耗・薬品曝露)に応じた耐性評価がより重要になります。
被覆の耐摩耗性はどのように評価しますか?
実車の配索状態を模擬し、金属エッジや他部品との接触を想定した往復摺動(ラビング試験)を行い、被覆が破れて導体が露出するまでの摩耗量・回数を確認します。
洗車用洗剤による被覆劣化は評価が必要ですか?
酸性・アルカリ性の洗車用洗剤や融雪剤への曝露で被覆が膨潤・軟化するケースがあるため、実使用で想定される薬品を用いた耐薬品性試験での確認が推奨されます。
株式会社フォスターについて
株式会社フォスターは三重県に拠点を置き、自動車部品用コネクタ・ワイヤーハーネス・圧着端子を中心とした受託試験・評価を20年以上にわたり手がけてきました。豊富な試験設備と実務経験に基づき、設計・品質保証・生産技術のお客様の技術課題解決をサポートしています。
