概要
回路内で異なる金属同士が接触する箇所には、温度差に応じた熱起電力(熱電対効果)が必ず発生します。微小信号を扱う計測回路や高精度なセンサ回路では、この熱起電力が無視できない誤差要因となるため、材料選定・接続構造・回路設計の各段階での対策が必要です。本ページでは設計者向けに、熱起電力の発生要因と代表的な対策手法、キャンセル回路設計の考え方を解説します。
異種金属接触で熱起電力が発生する理由
2種類の異なる金属を接続すると、その接続点(接合部)はゼーベック効果による熱電対と同じ構造になります。接続点間に温度差が存在すると、両金属のゼーベック係数の差に応じた熱起電力が発生し、これが直流的なオフセット電圧として測定回路に重畳します。コネクタ端子と配線材料、基板パターンとリード線など、意図せず異種金属の組み合わせが生じる箇所は回路内に数多く存在するため、設計時にこれを想定しておく必要があります。
熱起電力対策の基本手法
- 回路内の接続点をできるだけ同一材料または近いゼーベック係数の材料で統一する
- 温度差が生じやすい接続点を物理的に近接配置し、等温化(アイソサーマルブロック化)する
- 対になる接続点を対称に配置し、互いの熱起電力が打ち消し合う構成にする
- 低熱起電力仕様のコネクタ・リレー・端子(一般に数µV以下を規定するものもある)を選定する
- 温度勾配の原因となる発熱源(パワー素子・抵抗など)から信号系配線を離す
キャンセル回路設計のポイント
熱起電力を回路側で相殺する手法としては、電流反転(オフセット反転)による差分演算や、対称な2つの信号経路を用いた差動構成が代表的です。電流の向きを反転させて2回測定し、その平均値を取ることで、電流方向に依存しない熱起電力成分を打ち消す反転通電法は特に有効です。また、基準接点補償を行う熱電対回路と同様の考え方で、温度センサを併設して熱起電力分をソフトウェア的に補正する方法も広く用いられています。
設計時に注意すべきポイント
| 対策アプローチ | 留意点 |
|---|---|
| 材料統一 | コスト・機械強度・耐食性など他要求とのトレードオフを考慮する |
| 等温化配置 | 筐体内の温度分布・風路設計との整合が必要 |
| 対称配置によるキャンセル | 配線長・接触抵抗のばらつきで完全な相殺は困難な場合がある |
| 電流反転法 | 測定時間が増加するため高速応答が必要な用途には不向きな場合がある |
関連する試験
よくある質問
熱起電力対策はどんな回路で特に重要ですか?
微小電圧・微小電流を扱う計測回路、精密抵抗測定回路、温度センサ・歪みゲージなどのアナログフロントエンドで特に重要です。信号レベルがµVオーダーになるほど、数µVの熱起電力誤差の影響が相対的に大きくなります。
コネクタ端子の材料を統一すれば熱起電力は完全になくなりますか?
同一材料であれば理論上は熱起電力は発生しませんが、実際にはめっき層や合金組成のわずかな違い、酸化被膜の状態などにより微小な熱起電力が残存する場合があります。完全な対策には等温化や回路的なキャンセル手法との併用が有効です。
反転通電法とはどのような測定方法ですか?
電流の向きを正方向・逆方向で交互に流し、それぞれの測定値の差分または平均を取ることで、電流方向に依存しない熱起電力オフセット成分を相殺する測定手法です。低抵抗の高精度測定でよく用いられます。
熱起電力対策を怠るとどのような不具合が起こりますか?
温度センサの測定誤差、微小電流検出回路のゼロ点ドリフト、精密抵抗測定値のばらつきなど、見かけ上は原因不明の測定誤差として現れることが多く、原因特定に時間を要する場合があります。
株式会社フォスターについて
株式会社フォスターは三重県に拠点を置き、自動車部品(コネクタ・ハーネス・圧着端子)の受託試験を中心に20年以上の実績を有しております。環境試験、電気特性試験、機械的特性試験など幅広い評価に対応し、お客様の品質保証・開発をサポートしています。
