概要
自動車電装品や民生機器で採用が進む低温はんだ(Sn-Bi系)は、リフロー温度を下げることで基板や樹脂部品への熱ダメージを軽減できる一方、ビスマス由来の脆さから衝撃や落下時に接合部が剥離しやすいという弱点を抱えています。本記事では低温はんだの特性とメリットを整理したうえで、脆性剥離が起こるメカニズムと、設計・プロセス両面での対策、フォスターで実施できる評価試験について解説します。
低温はんだ(Sn-Bi系)とは
低温はんだとは、一般的なSn-Ag-Cu系はんだ(融点217℃前後)よりも低い温度で溶融する合金系はんだの総称で、代表例がスズ(Sn)とビスマス(Bi)を主成分とするSn-Bi系はんだです。共晶組成(Sn42/Bi58付近)では融点が138℃程度まで下がり、リフロー温度を160〜180℃程度まで引き下げることが可能になります。この特性により、熱に弱い樹脂ハウジングやコネクタ、MLCCなどの部品を実装する基板、あるいは複数回リフローを行う両面実装基板において、部品や基板への熱ダメージ・反りを抑えながらはんだ付けできる点が評価され、車載電装品や小型民生機器で採用が広がっています。
低温はんだ採用の主なメリット
- リフロー温度を40〜60℃程度引き下げられ、消費電力・CO2排出量を削減できる
- 基板の反り(ウォーページ)を抑制し、はんだ付け不良や部品浮きを低減できる
- 樹脂コネクタハウジングやLED、電解コンデンサなど熱に弱い部品への熱ダメージを軽減できる
- リフロー炉の予熱・冷却時間を短縮でき、タクトタイム短縮につながる
- Sn-Pb共晶はんだに近い融点帯を選べるため、既存設備からの移行がしやすい
脆性剥離が発生するメカニズム
Sn-Bi系はんだの弱点は、Biが常温でも脆く延性に乏しい金属である点にあります。凝固時にBiがSnの結晶粒界に偏析すると、粒界近傍でBiリッチ相が連続的に分布し、応力が集中しやすい脆弱な経路が形成されます。この状態で落下や衝突による衝撃荷重、あるいは振動が加わると、亀裂が粒界のBiリッチ相に沿って一気に進展し、はんだ層内部や電極界面(Cu-Sn金属間化合物層)で剥離が生じます。Pbフリー化にともないSn-Bi系にさらに微量のCuやAg、Znなどを添加した組成でも、Bi偏析そのものを完全には防げないため、耐衝撃性の評価が欠かせません。加えて、リフロー後にSn-Pbはんだが混在する基板ではSn-Pb-Bi三元系の低融点相(融点約96℃)が形成され、より脆化しやすくなる点にも注意が必要です。
剥離リスクを高める要因
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| Bi偏析の粗大化 | 冷却速度が遅いとBiリッチ相が粗大化し、粒界脆化が進みやすい |
| 異種はんだの混在 | Sn-Pbはんだとの混載により低融点脆弱相が生成される |
| 繰り返し衝撃・振動 | 車載環境での走行振動や落下衝撃で亀裂が累積進展する |
| 熱サイクル | 温度変化による熱応力の繰り返しで微小亀裂が発生・成長する |
| フィレット形状不良 | フィレットが小さい・濡れ性不足だと応力集中点になりやすい |
脆性剥離を防ぐ設計・プロセス対策
- 組成にCu・Ag・Znなどを微量添加し、Bi偏析の粗大化を抑制した改良系はんだを選定する
- リフロー後の冷却速度を管理し、Biリッチ相の粗大化を防ぐ
- 落下・衝撃時に応力が集中しやすい端部・角部への大型部品配置を避ける
- フィレット形状・濡れ性を管理し、応力集中を避けるランド設計とする
- Sn-Pbはんだとの混在を避け、リペア工程でのはんだ種混合を管理する
- 実機を想定した衝撃・落下・振動試験で接合信頼性を事前に検証する
フォスターで実施できる評価試験
フォスターでは、低温はんだ接合部の脆性剥離リスクを実機に近い条件で評価するため、衝撃試験や落下衝撃試験による接合部の耐衝撃性評価、振動試験・衝撃試験による長期的な亀裂進展の評価、冷熱衝撃試験・サーマルショック試験による熱サイクル疲労評価、断面構造検査による接合界面の観察・亀裂有無の確認まで、一連の評価を組み合わせてご提案しています。試験条件は車載規格や量産条件に合わせてカスタマイズできますので、開発初期段階での材料選定から量産前の信頼性検証まで幅広くご相談いただけます。
関連する試験
よくある質問
低温はんだと従来のSn-Ag-Cu系はんだはどちらが信頼性が高いですか?
一概にどちらが優れているとは言えず、用途や想定される負荷条件によって最適解が異なります。低温はんだは熱ダメージ低減に優れる一方、耐衝撃性ではSn-Ag-Cu系に劣る傾向があるため、実機を想定した評価試験で検証することが重要です。
低温はんだの脆性剥離はどのような症状で気づけますか?
導通不良や間欠断線、外観上のクラック(亀裂)として現れることが多く、初期段階では目視で気づきにくい場合もあります。断面観察や衝撃試験による評価で早期に把握することをおすすめします。
低温はんだの評価にはどのくらいの期間がかかりますか?
試験項目や条件数により異なりますが、衝撃試験や断面観察単体であれば数日〜1週間程度、熱サイクル試験を含む場合は数週間程度を要することがあります。事前にご相談いただければ最適な試験計画をご提案します。
試作段階のサンプル数が少なくても評価は可能ですか?
可能です。試料準備(電線加工・組立対応)にも対応しておりますので、少数サンプルでの予備評価から量産前の本評価まで、段階に応じたご提案をいたします。
株式会社フォスターについて
株式会社フォスターは三重県に拠点を置き、自動車部品・コネクタ・ワイヤーハーネスの受託試験を専門とする試験機関です。20年以上にわたり蓄積した豊富な実績とノウハウをもとに、電気的特性試験、機械的特性試験、環境試験、材料分析まで幅広い評価にワンストップで対応しています。
