概要
自動車のドアハーネスやトランクハーネスなど、可動部を通る配線は繰り返し屈曲にさらされます。株式会社フォスターでは、ハーネスの屈曲寿命を評価するケーブル引張強度試験・振動試験・温湿度サイクル試験を受託し、設計段階での信頼性確認をサポートしています。
許容曲げ半径(Minimum Bending Radius、MBR)は電線・ハーネスを曲げた際に断線や絶縁破壊が生じない最小の曲げ半径を指し、電線径や被覆材の種類によって異なります。設計段階でMBRを適切に考慮することで、ハーネスの早期劣化・断線を防止できます。
許容曲げ半径(MBR)の定義と規定値
電線・ケーブルの許容曲げ半径は、電線外径(OD)の何倍かで規定されます。一般的な自動車用薄肉電線(AV・AVS電線)では固定配線で電線外径の5倍以上、可動配線では10倍以上を目安とする場合が多いですが、電線メーカー仕様書・車両メーカー設計標準に従うことが原則です。シールド線・同軸ケーブルなどは金属編組層への影響を考慮してさらに大きいMBRが設定されます。
被覆材の種類も許容曲げ半径に影響します。塩化ビニル(PVC)系被覆は比較的柔軟ですが低温での硬化に注意が必要です。ポリエチレン(PE)系・フッ素樹脂系は低温屈曲特性に優れますが硬いため、可動部での使用時は特性を確認した上でMBRを設定します。
| 用途区分 | 推奨MBR(電線外径比) | 代表的な適用箇所 |
|---|---|---|
| 固定配線 | 5D以上 | 車体内固定ルート |
| 可動配線(低頻度) | 8D以上 | ドア・トランク開閉部 |
| 可動配線(高頻度) | 10〜15D以上 | スライドドア・ロボットアーム |
| 高フレキシブルケーブル | 4〜6D以上(仕様書準拠) | 機器内部・頻繁可動部 |
屈曲疲労試験による寿命評価
屈曲試験(Flex Test、Bending Endurance Test)は、電線・ハーネスを所定の曲げ半径・角度で繰り返し屈曲させ、断線(導体抵抗変化率)または絶縁破壊(絶縁抵抗低下)が発生するまでの屈曲回数を測定する試験です。IEC 60227・JIS C 3216などの規格に準拠した試験条件が設定されます。
試験中は電線の導体抵抗または絶縁抵抗をリアルタイム(または定期的)にモニタリングし、規定値からの変化率(一般的に初期値の200〜300%以上で不合格)をもって寿命と判定します。低温(−40℃)での屈曲試験は、北海道・北欧向け車両の信頼性確認で特に重要です。
屈曲寿命に影響する因子と設計上の対策
屈曲寿命は曲げ半径・屈曲角度・屈曲速度・温度・電線材料(素線径・撚り方向・素線数)・被覆材料の組み合わせで決まります。細い素線(0.05〜0.08mm程度)を多数本撚り合わせた高フレキシブル電線は、単純な撚り線より屈曲寿命が大幅に延長されます。
設計対策としては、可動部のルーティングでMBRを守った余長確保・コルゲートチューブ・グロメットによる外傷保護・クランプ位置の適正化などが有効です。フォスターでは試験前の条件設定相談から、試験後の破断部位の断面検査(断線モード特定)まで一貫したサポートを提供しています。
- 使用電線の許容曲げ半径(MBR)を仕様書で確認する
- 可動部の余長を十分に確保し、引っ張り状態でのルーティングを避ける
- 屈曲部には高フレキシブル電線(極細素線撚り線)を採用する
- グロメット・コルゲートチューブで外傷から保護する
- 試作段階で屈曲疲労試験を実施し、設計寿命を確認する
関連する試験
関連するページ
- ワイヤーハーネスの構成部品と役割|電線・端子・コネクタ・外装
- 電線被覆材料の特性比較|PVC・PE・フッ素樹脂の耐熱・難燃性
- 電線の太さ(AWG)と許容電流の関係|計算式と選定早見表
- 固有振動数と共振で起きる構造破壊と設計回避
よくある質問
許容曲げ半径と最小曲げ半径は同じですか?
表現は異なりますが一般的に同じ意味で使われます。許容曲げ半径(MBR:Minimum Bending Radius)は「これより小さい半径で曲げると損傷が生じる境界値」であり、実際の設計ではこれより大きい曲げ半径を確保するのが原則です。
屈曲試験の屈曲回数はどのように設定しますか?
車両の使用期間中に想定される開閉回数(ドアの場合は10〜20万回など)を想定した回数を目標値とします。JASO D 616や車両メーカーの設計標準に規定値が示されている場合はその値に従います。フォスターでは目標回数と試験条件の相談にも対応しています。
低温環境での屈曲試験は対応できますか?
はい、対応可能です。温度槽付き屈曲試験装置により、−40℃などの低温条件での試験が実施できます。寒冷地使用を想定した電線・ハーネスの低温屈曲試験のご依頼をお受けしています。
屈曲試験後に断線箇所を調べたい場合はどうすればよいですか?
試験後に断線が発生した試料の断線部位を断面検査(断面構造検査)で観察することで、素線切断モード(疲労破断・局所的損傷など)を特定できます。フォスターでは試験と断面検査を一括してご依頼いただくことが可能です。
株式会社フォスターについて
株式会社フォスターは三重県に拠点を置き、自動車部品(コネクタ・ハーネス・圧着端子)の受託試験を中心に20年以上の実績を有しております。環境試験、電気特性試験、機械的特性試験など幅広い評価に対応し、お客様の品質保証・開発をサポートしています。
