部分放電(コロナ放電)の発生原因と抑制設計

概要

電子部品や車載コネクタの絶縁破壊は、ある日突然発生するわけではなく、多くの場合「部分放電(コロナ放電)」と呼ばれる微小な放電現象が絶縁物内部で繰り返され、徐々に絶縁性能を劣化させた末に起こります。部分放電は目視では確認できず、初期段階では電気的特性にも大きな影響を与えないため見落とされがちですが、長期信頼性を左右する重要な現象です。本記事では部分放電の発生原因、絶縁破壊への進展プロセス、抑制のための設計手法を解説します。

部分放電(コロナ放電)とは何か

部分放電とは、絶縁体の一部分にのみ発生する局所的な放電現象で、絶縁物全体を貫通する絶縁破壊とは異なり、電極間を完全に短絡させない点が特徴です。空気中の鋭利な導体端部やコネクタ端子の角部で電界が集中し、周囲の空気が局所的に絶縁破壊を起こす現象は特に「コロナ放電」と呼ばれ、青白い発光や特有の異臭(オゾン臭)を伴うことがあります。固体絶縁物の内部に存在する微小なボイド(気泡)や、絶縁物と導体の界面の微小な隙間でも同様の局所放電が発生し、これらを総称して部分放電と呼びます。部分放電自体は瞬間的にはμA〜mAオーダーの微小な電流・電荷移動に過ぎませんが、繰り返し発生することで絶縁物への蓄積ダメージとなります。

部分放電の発生原因

  • 導体端部・端子角部での電界集中(曲率半径が小さいほど電界強度が高くなる)
  • 樹脂成形時に混入する微小ボイド(気泡)や、異なる材料界面での密着不良
  • 沿面距離・空間距離の不足による絶縁物表面での電界集中
  • 高湿度環境での結露や水分吸収による絶縁物の誘電率変化・電界分布の乱れ
  • 経年劣化により絶縁物表面にトラッキング(炭化導電路)が形成された状態での高電圧印加

部分放電が引き起こす絶縁劣化の進行プロセス

部分放電が繰り返し発生すると、放電によって生じる紫外線・オゾン・熱・イオン衝撃が絶縁物表面や内部を化学的・物理的に浸食し、樹枝状に劣化が広がる「トリーイング(電気トリー)」という現象に進展します。トリーイングは初期段階では絶縁抵抗値や耐電圧特性にほとんど変化を与えないため、通常の出荷検査では見逃されやすいという特徴があります。しかし劣化が進行し樹枝状の劣化路が電極間を貫通する長さに達すると、ある時点で急激に絶縁破壊に至ります。このため部分放電は「絶縁破壊の前兆現象」として位置づけられ、特に高電圧化が進むxEV(電動車)のコネクタ・ワイヤーハーネスにおいては、長期信頼性を確保する上で無視できない設計要素となっています。

部分放電を抑制する設計のポイント

対策分類具体的な設計手法
形状設計端子・導体の角部にR形状を設け、曲率半径を大きくして電界集中を緩和する
絶縁距離IEC 60664-1等の規格に基づき、使用電圧・汚損度に応じた沿面距離・空間距離を確保する
材料選定誘電率・耐トラッキング性(CTI値)に優れた樹脂材料を高電圧部に採用する
成形品質ボイド・気泡の混入を防ぐため、金型のガス抜き設計や保圧条件を最適化する
環境対策防水・防湿構造とし、結露・浸水による絶縁劣化を防止する

部分放電の評価・検出方法

部分放電の評価には、放電に伴う微小電流パルスを検出する専用の測定システムを用いる方法が一般的で、放電開始電圧や放電電荷量を定量評価します。フォスターでは、耐電圧試験や絶縁抵抗試験を通じて絶縁性能の異常兆候を捉えるほか、高温高湿環境下での結露試験や恒温恒湿試験と組み合わせることで、部分放電の誘因となりやすい湿潤環境での絶縁劣化傾向を評価する複合試験にも対応しています。また、部分放電に伴う高周波ノイズはEMC特性にも影響するため、必要に応じてEMC試験による評価を組み合わせることも有効です。設計段階から量産前評価まで、絶縁信頼性の確認をサポートします。


関連する試験


よくある質問

コロナ放電と部分放電は同じものですか?

コロナ放電は空気中で発生する部分放電の一種です。部分放電はより広い概念で、固体絶縁物内部のボイドや界面で発生するものも含みます。

部分放電は目視で確認できますか?

暗所であれば発光(コロナ発光)が見える場合がありますが、固体絶縁物内部の部分放電は目視での確認はできず、専用の検出装置が必要です。

部分放電が発生しても電気的特性に問題がなければ大丈夫ですか?

初期段階では耐電圧・絶縁抵抗に大きな変化が現れないことが多く、これが部分放電の見落としにつながる要因です。長期的にはトリーイングを経て絶縁破壊に進展するリスクがあるため、放置は推奨されません。

高電圧化するxEV用コネクタでは部分放電対策がなぜ重要ですか?

使用電圧が上がるほど電界強度が高まり部分放電が発生しやすくなる一方、絶縁破壊時の影響(発火・機能停止)も大きくなるため、設計段階からの沿面・空間距離確保と材料選定が不可欠です。


株式会社フォスターについて

株式会社フォスターは三重県に拠点を置き、自動車部品・コネクタ・ワイヤーハーネスの受託試験を専門とする試験機関です。20年以上にわたり蓄積した豊富な実績とノウハウをもとに、電気的特性試験、機械的特性試験、環境試験、材料分析まで幅広い評価にワンストップで対応しています。