サーマルショックによる電子部品破壊の要因と試験設計

概要

急激な温度変化にさらされると、材料間の熱膨張係数差に起因する熱応力が瞬時に発生し、はんだクラックや樹脂割れ、封止部の剥離といった破壊に至ることがあります。これがサーマルショック(熱衝撃)による破壊であり、緩やかな温度変化を繰り返す冷熱サイクル試験とは応力発生の速度とメカニズムが異なります。本ページでは熱衝撃による破壊要因と、両試験の違いを踏まえた試験設計の考え方を解説します。

サーマルショックによる破壊メカニズム

サーマルショックは短時間(数十秒から数分)で極端な高温槽と低温槽の間を行き来させる、あるいは高温・低温の液槽に急激に浸漬させることで、部品内部に急峻な温度勾配と熱応力を発生させる負荷形態です。異なる熱膨張係数を持つ材料(樹脂ハウジングと金属端子、はんだと基板、封止材とリード線など)が接合された構造では、急激な温度変化により界面近傍に大きなせん断応力・引張応力が生じ、はんだ接合部のクラック、樹脂の割れ、圧着部やモールド部の剥離・浸水経路の形成などを引き起こします。特に液槽式(気相間を移動する気槽式に対し、温度の異なる液体に直接浸漬する方式)は温度変化速度が非常に速く、より厳しい熱応力を短時間で与えることができます。

冷熱サイクル試験との違い

比較項目熱衝撃(冷熱衝撃)試験冷熱サイクル試験
温度変化速度数秒〜数十秒で急激に変化(気槽・液槽移動方式)数分〜数十分かけて緩やかに変化
主な破壊モード瞬間的な熱応力によるクラック・剥離・封止破壊熱疲労の蓄積によるはんだ疲労・樹脂の経年劣化
評価目的接合部・封止部の耐衝撃強度、初期欠陥の顕在化長期使用を模擬した疲労寿命・累積ダメージ評価
代表的な適用対象はんだ接合部、モールド部、圧着部の急変耐性確認樹脂ハウジングの経年劣化、端子接圧の経年変化評価

熱衝撃を助長する要因

  • 接合される材料間の熱膨張係数差が大きいこと(樹脂と金属、異種金属同士など)
  • 封止材やモールド樹脂の柔軟性不足、経年硬化による応力吸収能力の低下
  • はんだ接合部の厚みやフィレット形状など応力集中しやすい構造
  • 温度変化の繰り返し回数や到達温度差(ΔT)の大きさ
  • 水分侵入との複合(急冷時の内部結露・呼吸現象による吸湿)

試験設計における留意点

熱衝撃試験を設計する際は、実使用で想定される最も厳しい温度変化(エンジン始動直後の急速な温度上昇や、洗車時の低温部品への高温噴射など)を想定した到達温度と移行時間を設定することが重要です。また熱衝撃試験と冷熱サイクル試験は破壊メカニズムが異なるため、両者を組み合わせて評価することで、初期不良の顕在化(熱衝撃)と長期使用における疲労劣化(冷熱サイクル)の両面からコネクタ・端子の信頼性を確認できます。断面観察によりクラックや剥離の発生箇所・進展状況を確認することも評価の精度を高める上で有効です。


関連する試験


よくある質問

熱衝撃試験は気槽式と液槽式のどちらを選ぶべきですか。

気槽式は空気を媒体とするため比較的緩やかで扱いやすい一方、液槽式は液体に直接浸漬するため温度変化速度が非常に速く、より厳しい熱応力を短時間で評価できます。評価対象の想定劣化モードや規格要求に応じて選定します。

熱衝撃試験だけで信頼性評価は十分ですか。

熱衝撃試験は急激な応力による初期欠陥の検出に適していますが、長期使用による疲労蓄積を評価するには冷熱サイクル試験など緩やかな温度変化を繰り返す試験との組み合わせが推奨されます。

ΔT(温度差)はどのように設定すればよいですか。

実使用環境で想定される最低温度と最高温度の差を基本とし、必要に応じて規格(自動車メーカー規格等)で定められた条件を参照して設定します。設計マージンを考慮しやや厳しめの条件を設定するケースもあります。

熱衝撃による破壊は目視で分かりますか。

外観のクラックや変色として現れる場合もありますが、内部のはんだクラックや界面剥離は目視では判別が難しいため、断面観察や電気的特性(接触抵抗、絶縁抵抗)の測定を併用した評価が必要です。


株式会社フォスターについて

株式会社フォスターは三重県に拠点を置き、自動車部品(コネクタ・ハーネス・圧着端子)の受託試験を中心に20年以上の実績を有しております。環境試験、電気特性試験、機械的特性試験など幅広い評価に対応し、お客様の品質保証・開発をサポートしています。