概要
FT-IR(フーリエ変換赤外分光光度計)は、試料に赤外線を照射した際の吸収スペクトルから、分子の官能基や化学構造を推定し、有機物の種類を同定する分析手法です。コネクタやハーネスの製造・使用環境で混入する油分・樹脂片・接着剤残渣といった有機異物の特定に広く用いられ、SEM-EDXでは判別できない有機成分の解析に不可欠な手法です。本ページでは、FT-IRの原理と故障解析への活用方法を解説します。
FT-IRの原理|赤外吸収スペクトルによる分子構造の特定
FT-IRは、試料に赤外線を照射し、分子内の官能基(C-H、C=O、O-Hなど)がそれぞれ固有の波数(周波数)の赤外線を吸収する性質を利用して、透過または反射した光の強度を波数ごとに測定する分析手法です。得られた赤外吸収スペクトルは分子構造に応じた固有のパターン(指紋領域)を示すため、既知の標準スペクトルライブラリと照合することで、試料に含まれる有機物の種類を高い確度で同定できます。フーリエ変換方式を用いることで、広範囲の波数を短時間かつ高感度に測定できる点が特長です。
SEM-EDXとの違い|無機元素分析と有機物同定の使い分け
SEM-EDXは元素組成の分析を得意とする一方、油脂・樹脂・ゴム・接着剤といった有機化合物は主に炭素・水素・酸素で構成されるため、EDXだけでは種類の判別が困難です。FT-IRは分子の化学結合状態を反映したスペクトルを取得するため、無機物の混入か有機物の混入かを見極めた上で、有機異物であればFT-IRによる分子種の同定、無機異物であればSEM-EDXによる元素同定というように、対象に応じて手法を使い分ける、あるいは両手法を併用することが効果的です。
コネクタ・ハーネス解析での主な活用シーン
- 圧着部・接点周辺に付着した油分・グリスの成分特定と、混入経路の推定
- 端子表面の絶縁性被膜(接触不良原因)の樹脂・添加剤成分の同定
- 被覆材・ハウジング樹脂の劣化・変質状態の確認(酸化劣化などによるスペクトル変化)
- 異物混入クレームにおける異物の材質特定(工程内の樹脂片・梱包材由来の混入など)
微小異物分析における顕微FT-IRの活用
コネクタの接点不良などで問題となる異物は数十〜数百ミクロン程度と微小な場合が多いため、赤外顕微鏡を組み合わせた顕微FT-IR分析が有効です。微小な異物にピンポイントで赤外線を照射してスペクトルを取得することで、周囲の母材の影響を抑えつつ、対象異物のみの成分同定が可能になります。フォスターでは、顕微FT-IR分析により、接触不良や絶縁不良の原因となる微小有機異物の特定を行っています。
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よくある質問
FT-IRで金属異物も分析できますか?
FT-IRは分子の化学結合による赤外吸収を利用する手法のため、金属単体のような無機元素の同定には適していません。金属・無機異物の元素同定にはSEM-EDXを用います。
どの程度の大きさの異物まで分析可能ですか?
赤外顕微鏡を組み合わせた顕微FT-IRを用いることで、数十ミクロン程度の微小な異物でもピンポイントでスペクトルを取得し、成分同定が可能です。
接触不良の原因が有機物か無機物か分からない場合はどうすればよいですか?
まずSEM-EDXで元素組成を確認し、炭素・酸素主体で明確な金属元素が検出されない場合はFT-IRによる有機物同定を行うなど、段階的に手法を組み合わせて絞り込むことが一般的です。フォスターではこうした複合解析にも対応しています。
スペクトルの照合はどのように行いますか?
得られた吸収スペクトルを、既知の材料・添加剤の標準スペクトルライブラリと比較し、吸収ピークの位置とパターンの一致度から材質を推定します。
株式会社フォスターについて
株式会社フォスターは三重県に拠点を置き、自動車部品(コネクタ・ハーネス・圧着端子)の受託試験を中心に20年以上の実績を有しております。環境試験、電気特性試験、機械的特性試験など幅広い評価に対応し、お客様の品質保証・開発をサポートしています。
