ロックインサーモグラフィ(LIT)の原理とショート箇所特定

概要

ロックインサーモグラフィ(LIT)は、微弱な周期的発熱を赤外線カメラで高感度に検出し、基板やコネクタ内部の微小なショート箇所・リーク電流の発生位置を非破壊で特定する故障解析手法です。通常の赤外線サーモグラフィでは検出が難しい数mK(ミリケルビン)レベルの温度変化も可視化できるため、微小不具合の原因特定に広く用いられています。本ページでは、LITの原理と、コネクタ・ハーネス製品のショート不具合解析への応用について解説します。

LITの原理|周期的励起信号とロックイン検出

LITでは、対象のサンプルに一定周波数で交流的な電気信号(ON/OFF)を印加し、その周波数と同期させて赤外線カメラで熱画像を連続取得します。取得した画像データを励起信号と同じ周波数成分でロックイン処理(同期加算)することで、ランダムな熱ノイズを除去し、励起周波数に同期した微小な発熱成分だけを選択的に抽出します。この手法により、通常のサーモグラフィでは埋もれてしまうような数mKオーダーの微小な発熱源でも、位相情報とあわせて位置を高精度に特定できます。

コネクタ・ハーネスのショート箇所特定への応用

自動車用コネクタやワイヤーハーネスでは、端子間の絶縁劣化や被覆の微小損傷によるリーク電流、はんだ接合部の微小クラックによる断続的な導通不良など、通常の外観検査や導通試験だけでは発生箇所を特定しにくい不具合が発生することがあります。LITを用いることで、これらの微小な発熱源を非破壊のまま画像として可視化し、後工程の断面観察やSEM-EDX分析を行う箇所を的確に絞り込むことができます。故障モードの再現試験と組み合わせることで、実使用条件に近い状態での発熱挙動の確認も可能です。

LIT活用のメリットと注意点

  • 非破壊で発熱位置を特定できるため、解析後も追加分析(断面観察など)が可能
  • 数mKレベルの微小な温度変化を検出でき、初期段階のショートやリークも捉えやすい
  • 位相画像により発熱源の深さ方向の情報もある程度推定できる
  • 印加信号の周波数設定や測定環境(外乱熱源の排除)が結果の精度に影響するため、条件設定には専門的なノウハウが必要

関連する試験


よくある質問

LITと通常の赤外線サーモグラフィの違いは?

通常の赤外線サーモグラフィは対象の温度分布をそのまま撮影しますが、LITは周期的な励起信号に同期して熱画像を取得し、ロックイン処理でノイズを除去することで、数mKレベルの微小な発熱を高感度に検出できる点が異なります。

LITはどのような不具合に有効ですか?

端子間の微小リーク電流、絶縁劣化による微小ショート、はんだ接合部の断続的な導通不良など、発熱を伴うが外観からは判別しにくい不具合の位置特定に有効です。

LITだけで不具合原因まで特定できますか?

LITは発熱位置を特定する手法であり、原因物質や構造的な要因の特定には、特定した箇所を断面観察やSEM-EDX、FT-IRなどで詳細分析することが必要です。フォスターでは複数の解析手法を組み合わせた総合解析を行っています。

非破壊で解析できるメリットは?

サンプルを破壊せずに発熱位置を特定できるため、同一サンプルで後続の断面観察や元素分析を実施でき、限られたサンプル数でも多角的な解析が可能です。


株式会社フォスターについて

株式会社フォスターは三重県に拠点を置き、自動車部品(コネクタ・ハーネス・圧着端子)の受託試験を中心に20年以上の実績を有しております。環境試験、電気特性試験、機械的特性試験など幅広い評価に対応し、お客様の品質保証・開発をサポートしています。