樹脂ハウジングのバリ発生原因と沿面距離を脅かす電気リスク

概要

コネクタハウジングの成形時に発生するバリは、コンタクト間の沿面距離・空間距離を縮小させ、絶縁性能を著しく低下させるリスクがあります。フォスターでは断面構造検査・高温放置試験・温湿度サイクル試験によって、バリの影響を含めた絶縁信頼性を評価しています。

特にEV・HEVの高電圧コネクタでは数百ボルトの電圧が印加されるため、わずかなバリでも絶縁破壊や沿面放電の原因になります。成形品質の管理と試験による確認が、製品安全の観点から不可欠です。

バリの発生原因と種類

樹脂成形時のバリは主に金型パーティングライン・ゲート周辺・インサート端子周囲に発生します。金型の摩耗・型締め力不足・樹脂粘度のばらつき・射出圧の過剰などが主な原因です。高流動樹脂(LCPなど)はわずかな型隙間にも浸入するため、バリ管理が特に難しい材料です。

バリの形態には①薄膜状(フラッシュバリ)、②線状(ピンバリ)、③端子挿入穴周辺の突起状などがあります。フラッシュバリは面積が大きく沿面距離への影響が大きい一方、ピンバリは視認が難しく品質検査での見落としリスクがあります。

沿面距離・空間距離への影響と絶縁リスク

沿面距離とは絶縁体の表面に沿って測定した2つの導体間の最短距離、空間距離は空気中を直線で結んだ最短距離です。IEC 60664やAEC規格では電圧・汚染度・過電圧カテゴリに応じた最小沿面距離・空間距離が規定されており、バリがこれを縮小すると絶縁性能の規格不適合になります。

高電圧コネクタでは沿面距離がmm単位で管理されているため、0.1mm程度のバリでも規格値を割り込む可能性があります。バリが導電経路を形成すると沿面放電・トラッキング・絶縁破壊に至るリスクがあり、製品安全上の重大欠陥となります。

電圧区分最小沿面距離目安バリによるリスク対応策
低圧(<50V)0.6〜1.6mm外観検査
中圧(50〜300V)1.6〜4.0mm断面検査
高圧(300〜600V)4.0〜8.0mm断面検査+絶縁試験
超高圧(>600V)8.0mm以上非常に高全数管理

バリのリスク評価と試験方法

断面構造検査では成形品の樹脂充填状態・バリ寸法・沿面距離を断面観察で確認します。フォスターの断面検査ではエポキシ樹脂包埋後に精密研磨し、光学顕微鏡またはSEMで断面を観察することで、外観では検出できない内部バリや沿面距離短縮箇所を確認できます。

高温放置試験・温湿度サイクル試験では熱膨張・収縮によってバリが脱落・変形し、絶縁距離が変化するケースがあります。試験前後の断面観察と絶縁抵抗測定を組み合わせることで、環境試験下での絶縁信頼性を総合評価できます。

  • 外観全数検査でバリの有無・位置を確認(目視・光学検査)
  • 断面構造検査で沿面距離・空間距離のバリによる短縮量を実測
  • 高温放置・温湿度サイクル後の絶縁抵抗変化で長期信頼性を確認
  • 金型管理(摩耗量記録・型締め力管理)でバリ発生の予防対策

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よくある質問

バリが沿面距離に影響するのはどのような場合ですか?

バリがコンタクト間または異なる電位の導体間の最短経路上に突出している場合に影響します。特に隣接するコンタクトピン間や、ハウジングのリブ・壁面付近のバリは沿面経路を短縮します。断面検査で実際の沿面距離を実測することが確実な確認方法です。

成形バリは製品寿命中に変化しますか?

はい、熱サイクルや振動によってバリが脱落・変形することがあります。脱落したバリが導電性異物として回路間に挟まると短絡の原因になります。温湿度サイクル試験や振動試験でバリの安定性を確認することが重要です。

LCPなど高流動樹脂でバリが多い理由は?

LCPは溶融粘度が非常に低いため、金型の微細な隙間にも樹脂が浸入しやすく、バリが発生しやすい特性があります。金型精度の維持管理や型締め力の最適化が特に重要で、バリ対策コストがLCP採用時のコスト要因のひとつになります。

沿面距離の規格値はどこで確認できますか?

IEC 60664-1(機器内の絶縁配置規格)やIEC 60950(情報技術機器)、車載向けにはISO 6469(EV安全規格)などに規定されています。使用電圧・汚染度・過電圧カテゴリに応じた値が表形式で定義されているため、設計条件を明確にして該当する規格値を確認することが重要です。


株式会社フォスターについて

株式会社フォスターは三重県に拠点を置き、自動車部品(コネクタ・ハーネス・圧着端子)の受託試験を中心に20年以上の実績を有しております。環境試験、電気特性試験、機械的特性試験など幅広い評価に対応し、お客様の品質保証・開発をサポートしています。