シリコングリス・絶縁流体による接点障害のメカニズム

概要

防水・防塵のために使用されるシリコングリスやシール用の絶縁流体は、微量でも接点に移行すると絶縁性のシロキサン膜を形成し、導通不良を招くことがあります。本記事では、シリコン成分による接点障害が発生するメカニズムと、ガスクロマトグラフィ分析(GC-MS)を用いた原因究明の考え方を、品質保証・設計担当者向けに整理します。

シリコン系接点障害が注目される背景

自動車用コネクタでは防水シールやグロメット、防塵用途にシリコーン系材料が広く使われています。シリコーンは耐熱性・耐候性に優れる一方で、低分子シロキサン成分が揮発しやすく、微量でも接点近傍に移行・付着する性質があります。付着したシロキサンはアーク放電や摺動時の摩擦熱によって酸化的に分解され、二酸化ケイ素(SiO2)を主成分とする硬質な絶縁膜を接点表面に形成します。この絶縁膜は通常の油汚れと異なり機械的にも化学的にも除去が難しく、微弱電流回路の断続的な導通不良(オープン故障)の原因として知られています。

接点障害が進行するメカニズム

  • 揮発:グリスやシール材から低分子シロキサンが揮発し、コネクタ内部の雰囲気中に拡散する
  • 移行・付着:揮発したシロキサンが接点表面や端子摺動部に凝縮・付着する
  • 分解・酸化:接点の微摺動や微小アークによる局所加熱でシロキサンが分解し、SiO2膜が生成される
  • 絶縁膜の成長:スイッチング動作や振動による微摺動が繰り返されるたびに絶縁膜が堆積・成長する
  • 導通不良:絶縁膜が接点全体を覆うことで接触抵抗が急激に上昇し、間欠断・導通不良に至る

油膜由来の不良とシリコン由来不良の違い

項目一般的な油膜汚染シリコン(シロキサン)由来の絶縁膜
外観油光沢のある付着物として視認しやすい極めて薄く、外観からは判別が困難な場合が多い
除去性溶剤洗浄や摺動により比較的除去しやすい硬質な酸化膜のため機械的摺動でも除去が難しい
発生条件常温でも付着が進むアークや摺動熱など局所的な加熱が引き金になりやすい
主な検出手法FT-IR、外観検査GC-MS、EDX(Si・O元素検出)

ガスクロマトグラフィ分析(GC-MS)による原因究明

シリコン由来の接点障害が疑われる場合、まずEDX分析で接点表面のケイ素(Si)・酸素(O)の検出を確認し、絶縁膜の主成分がシロキサン系であるかを推定します。次にガスクロマトグラフィ質量分析(GC-MS)により、コネクタ内部やハウジング材から揮発する低分子シロキサン成分を定性・定量分析し、揮発源となっているグリスやシール材、隣接部品を特定します。あわせて接触抵抗測定や挿抜耐久試験を通じて、絶縁膜形成が実使用条件下で導通に与える影響度を評価し、対策優先度を判断する材料とします。

設計・工程での対策の考え方

  • 低揮発性グレードのシリコーングリス・シール材への切り替え検討
  • 接点近傍とシール部・グリス塗布部の物理的な離隔設計
  • 接点部への防塵・防散策キャップやラビリンス構造の採用
  • 微弱電流回路では二点接点構造やワイピング動作の大きい端子形状の採用
  • 工程管理として塗布量の適正化と過剰塗布の防止

関連する試験


よくある質問

シリコン由来の接点障害はなぜ発見が遅れやすいのですか。

形成される絶縁膜が非常に薄く外観からは判別しにくいこと、また間欠的な導通不良として現れるため再現性のある不良として捉えにくいことが理由です。GC-MSやEDXなど成分分析による確認が有効です。

GC-MS分析ではどのようなことが分かりますか。

コネクタ内部や部材から揮発する低分子シロキサン成分の種類と量を特定できます。揮発源となっている材料を絞り込むことで、設計変更や材料選定の判断材料になります。

低電圧・低電流回路で特にリスクが高いのはなぜですか。

低電圧回路では絶縁膜を突き破るのに十分なアーク発生や自己クリーニング作用が生じにくく、わずかな絶縁膜でも導通不良に直結しやすいためです。

対策の効果はどのように確認すればよいですか。

対策前後のサンプルで接触抵抗測定や挿抜耐久試験を実施し、抵抗値の変化や不良発生率を比較することで効果を定量的に確認できます。


株式会社フォスターについて

株式会社フォスターは三重県に拠点を置き、自動車部品・コネクタ・ワイヤーハーネスの受託試験を専門とする試験機関です。20年以上にわたり蓄積した豊富な実績とノウハウをもとに、電気的特性試験、機械的特性試験、環境試験、材料分析まで幅広い評価にワンストップで対応しています。